ロシア産原油に上限価格、その影響は
西側諸国は、ロシア産原油の取引価格の上限を1バレル60ドルに決めました。原油価格の下落を狙いますが、上手く行くでしょうか。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f0674d76da9d4bc2734b44c7ff235e284386e499 時事通信 最終閲覧日2022年12月4日
先進7カ国(G7)と欧州連合(EU)、オーストラリアは5日、海上輸送されるロシア産原油の取引価格に上限を設ける追加制裁を発動する。バイデン米政権が提案した枠組みで、ウクライナに侵攻を続けるロシアのエネルギー収入を減らす狙いがある。ただ、効果を疑問視する声も少なくない。
この制裁の意義は、ロシア産原油の値下がりによって原油全体の値下がりが起こり、世界の燃料不足やインフレを緩和することです。
取引価格の上限が1バレル60ドルということは、ロシア産原油価格が60ドル超であれば西側諸国はロシアの原油の輸出を、船舶保険やドル建て決済を断るという形で妨害します。逆に、1バレル60ドル以下となると、ロシア産原油が世界に出回るので他の産地の原油が値下がりして原油輸入国は助かります。
原油の相場は、下記のサイトに詳しいです。
https://oilprice.com/jp/%E5%8E%9F%E6%B2%B9%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%88 原油価格チャート
世界の代表的な原油の指標はアメリカのWTIです。今週末の相場は1バレル79.98ドルです。一方ロシアの原油はUralsで、1バレル64.22ドルです。15ドルもの差があります。1年前はWTIは69.49ドル、Uralsは71.03ドルと、Uralsの方が高いくらいでした。
ロシアがウクライナに侵攻したために西側諸国が制裁を行い、ロシアの輸出先が中国やインドに限られたために安く買い叩かれているのです。その分、WTIなど他の産地に買い手が集まり値上がりしています。
このギャップが埋まれば、多くの原油輸入国が助かります。
この60ドルという線引きは、話し合った国々にとっての妥協の産物です。ロシアが直接の脅威となっているポーランドなどはより低い価格設定を主張し、原油高に困る有力な輸入国は高い水準で輸入再開したいという本音が出ていました。
原油価格に関与する勢力としては、値下げをしたいのは欧州や日本の原油輸入国です。値下げに抵抗するのは産油国です。ロシア産原油をもう少し安く買えることになる中国やインドは賛成でしょうか。
戦費の調達に汲々とするロシア自身にとっては、高くても売れないのも安く買い叩かれるのも困りますが、今の相場よりもう少し安くなれば世界中が買ってくれるなら、60ドル以下というのも悪くはないのかもしれません。
原油相場が下がってくれることは我々の利益ですが、ロシアの敗北が遠ざかることには胸が痛みます。
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