「胃ろう」なしでは施設に居られない現実もある
ここの記事は、高齢者にとって非常に大事なことが書かれており、是非一読を勧めたい内容です。但し、補足しておかなくてはなりません。「胃瘻(いろう)」は、施設で暮らすために必要な場合がある、ということです。
口から食べられなくなったとき、胃に直接、管で栄養を入れる「胃ろう(PEG)」。栄養摂取が容易になる一方で、高齢で意思確認ができず、予後が期待できない患者にも胃ろうが作られるケースもある。終末期に向かう治療として、胃ろうは適切なのか-。家族や特別養護老人ホーム(特養)の関係者らから疑問の声が上がっている。(佐藤好美)
このような書き出しでは「胃瘻=悪」のようなイメージになってしまいそうですが、実際のところは、記事にもあるように、脳梗塞など病気からの回復のためのステップとして胃瘻を作ることには大きな意味があります。
一方で、単なる延命目的、元気になる見込みのない人に作ることは問題です。
しかし、「これでよいのか」との声は根強い。長寿科学振興財団が行った「高齢者の医療のあり方に関する研究」によると、一般病院の主治医で、自分が胃ろうの対象となったときに「受け入れる」とするのは5人に1人。特養の看護師では10人に9人以上が「拒否する」と答えている。
現場の人間はよく分かっています。尊厳を失い、ただ呼吸をし、糞尿を垂れ流すだけの人生は送りたくないと感じています。自分もご多分に漏れず、将来において胃瘻を受け入れるつもりはありません。
それでもなぜ、患者さんに胃瘻増設を行うのか、と言うことについては記事では書かれていないので補足します。
一つには、基本的には患者さんが死なないように頑張って医療を行わなければならないからです。
患者さんが病気になって入院した時点で、本人はともかく家族に明確な死生観が出来ていないことが多いです。
患者さんの家族から明確な意思表示がない限り、「延命しない」ことは訴訟に繋がります。
家族に相応の覚悟が出来た時点ではもう、完全に寝たきりで既に胃瘻が作られた後だったりします。
また、胃瘻は確かに楽な栄養法なのです。
飲み込みができなくなり、鼻から栄養を入れる「鼻腔(びくう)栄養」にしたが、義母は管をしばしば自分で抜いてしまう。ある日、見舞いに行くと、看護師から「忙しいときに手がかかる。胃ろうにしていただかないと困ります」と言われた。
飲み込み(嚥下機能;えんげきのう)が怪しくなってきた人に多大な手間と肺炎のリスクをを負って食べさせるのも施設の現実としては難しいし、「鼻腔栄養」は本人にとって著しく不快で、「自己抜去」のおそれが大きいです。
胃ろうにした義母はつなぎパジャマを着せられるようになった。患部をかきむしるからだという。
確かに胃瘻を自己抜去されたら大変なので「つなぎパジャマ」は仕方ないですが、「鼻腔栄養」の時は、「ミトン」や「抑制帯」など、酷く拘束されていたはずです。それでも抜かれるものだけど その時よりは随分マシなはずです。
そして胃瘻増設は、実は病院側のニーズでもあるのです。
食事の摂れない患者さんに対して、当面は点滴を行うのですが、点滴のままでは病院から出られません。
点滴のままで自宅に帰る、或いは施設に入所する、という人も稀にいますが、安全面、確実性、コストなどの面から、現実的には不可能と言って良いです。
胃瘻を作らずに軽い点滴だけで看取る、と言っても数カ月は頑張ってくれる(しまう)ものです。
そんな患者さんが病院に溢れたら、急患を受け入れる事が出来なくなります。
だから、胃瘻を作って施設に送るのです。
そんなわけで、「胃瘻を作らない」のも実は複雑な話なのです。
誰しもピンピンコロリを望みますが、現実は、なかなか思うように逝けません。
皆さんにお願いしたいこととしては、
入所時に記入する「意思確認書」に「お口から食べられなくなったとき」の項目を設けた。選択肢は「胃ろう増設などは受けない」「胃ろう手術などを受けて少しでも長く生きることを望む」など。本人と家族に死生観を確認してもらうためで、ほかにも▽自然に最期を迎えるか、できるだけ医療処置を受けるか▽急変時に心臓マッサージや気管内挿管を希望するか-などの質問項目が並ぶ。
このように、自分が重病に陥ったり寝たきりになったときにどのような処置を希望するか、予め家族と話し合って決めておいて欲しいです。
ちゃんと話を通しておくことが大事ですよ。
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